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特殊車両通行許可の必要性と罰則リスク

特車通行許可の必要性と罰則リスク

「知らずしらずのうちに、うっかり違反していませんか?」  
特殊車両の無許可走行は、道路損傷や事故を引き起こし、罰則の対象になることも。この記事では、道路法に基づく許可制度の重要性や、違反リスク(罰則)について詳しく解説していますので、運送事業者の方や運行管理者の方はぜひご覧ください。

▽まず、「特殊車両とは」から学びたい方はこちらへ▽

目次

特殊車両通行許可制度の必要性

特殊車両の通行を許可制にしている理由は下記の2つです。

  1. 道路の保全を確保するため
    特殊車両は通常の車両より寸法や重量が大きく、道路に著しい損傷を与える要因になります。
  2. 安全性を確認するため
    特殊車両の通行許可では、車両が道路を安全に通行できるかを審査しています。 許可や回答を受けないまま走行をしたり、許可内容とは異なる経路を走行したりすると、道路の安全性が不十分な運行につながってしまいます。

これらは「道路法」や「車両制限令」という法令に基づいており、違反した場合には厳しい罰則が適用されます。法令から読み解く必要性を理解し、特殊車両の通行許可についてさらに理解を深めていきましょう。

道路法第1条(この法律の目的)

この法律は、道路網の整備を図るため、道路に関して、路線の指定及び認定、管理、構造、保全、費用の負担区分等に関する事項を定め、もって交通の発達に寄与し、公共の福祉を増進することを目的とする。

簡単には、【交通インフラの整備、発展のために交通インフラを利用するものにはそれ相応の負担をさせる】ということです。 特殊車両通行許可の申請に手数料が必要とする根拠の条文です。特殊車両が道路を劣化させるため、それに耐えられる新たなインフラ整備が必要です。
運送事業者は交通インフラの保全、整備のために金銭的な負担をしなくてはなりません。

道路法第46条(通行の禁止または制限)

道路管理者は、(中略)、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止する為、区間を定めて道路の通行を禁止し、又は制限することができる。
一 道路の破損、欠壊その他の事由により交通が危険であると認められる場合
二 道路に関する工事の為、やむを得ないと認められる場合

ここでいう道路管理者とは、国道事務所をはじめとした各地方自治体です。 特殊車両の通行許可は、道路管理者に申請をします。不許可となる場合もあり、その場合の根拠となる条文です。

例えば下記のようなパターンが考えられます。
『道路の構造を保全』=車両の総重量が重すぎて道路が破損、橋梁が崩落する危険性がある場合には通行不可
『交通の危険を防止する』=車両の長さが長すぎて交差点で対向車線の交通を妨害し危険であると考えられる場合には通行不可

道路法第47条

道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(中略)の幅、重量、高さ、長さ及び最小回転半径の最高限度は、政令で定める。

この条文に書かれている「政令」が車両制限令であり、そこに特殊車両に該当する幅、重量等である一般的制限値が規定されています。

道路法第47条の2

道路管理者は、車両の構造又は車両に積載する貨物が特殊であるためやむを得ないと認めるときは、前条第2項の規定又は同条第3項の規定による禁止若しくは制限にかかわらず、当該車両を通行させようとする者の申請に基づいて、通行経路、通行時間等について、道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため必要な条件を付して、同条第1項の政令で定める最高限度又は同条第3項に規定する限度を超える車両(中略)の通行を許可することができる。

特殊車両の申請は、必要な条件を付して許可を出すことがあります。
特殊車両の通行条件についてより詳しく知りたい方はこちらの記事をお読みください!

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上記3つが特殊車両の通行許可に関する核になる条文です。

特殊車両が道路に与える影響

現在、建築後50年以上の橋梁が全国的に多く、道路、橋梁の老朽化が問題となっています。特に重量オーバーの特殊車両は、道路構造物への影響が甚大で老朽化した橋の劣化を早めています。

例)軸重10トンの基準に対して、軸重20トン(+10トン)の大型車両が1台走行した場合
  たった1回の走行で、道路に下記台数分の疲労を与えています。

  • 舗装の場合:4乗 ▶舗装のダメージ16台分
  • RC床版の場合:12乗 ▶RC床版のダメージ4,096台分
特殊車両が道路に与える影響

違反が原因で起こる事故例

事故例
橋の崩落無許可の過積載トラックが橋を通行。橋の耐荷重を大幅に超過し橋が崩落。補修に莫大な費用と長期通行止めで交通に大きな支障をきたします
積載物の落下固定が不十分だったため積載物が落下。後続車両に衝突する危険性があります。重量物の場合、落下物が原因で重大な二次事故に繋がる可能性があります
制限オーバーによるトンネル・高架の損傷高さ制限を超えた車両が許可なくトンネルを通行し、天井部分に接触して損傷。また、高架をくぐる際に上部の構造物に衝突し、大規模な修繕が必要になるケースも。
ブレーキ過熱による火災過積載の車両が長く下り坂を走り続けブレーキが加熱して発火、車両が炎上。道路が封鎖され大規模な渋滞が発生する恐れがあります
特車許可違反が原因の事故例

このような事故を防ぐためにも、特殊車両のルールを遵守し、適切な通行許可を取得することが重要です。

国道事務所による取り締まり

特殊車両の違反に対する取り締まりは年々強化されており、違反を繰り返す事業者には段階的に厳しい措置が講じられます。どのような取り締まりを行い、違反に対する措置を講じているのか理解していきましょう。

取り締まり場所

  1. 指導取締り基地 道路監理員と警察が同時に取締りをしている場合が多くあります。 重量・寸法・高さの計測、許可証の確認等を実施し、警告書・措置命令書の交付、積載物の軽減措置の実施がなされます。
  2. 車両重量自動計測装置 道路監理員に直接指導を受けるのではなく、計測されたデータを基に後日、車両の使用者である運送事業者へ警告書等が送られます。 警告書に対して、繰り返し違反を行う運送事業者は呼び出しの行政指導が行われます。
行政の特車違反取締まり方法

引用:国土交通省関東地方整備局

行政指導の流れ

  1. 警告書の発行
    違反の程度が軽微であり、措置命令処分を行う必要がないと認められる場合に警告を行う
  2. 措置命令
    警告以外の場合において、重量等の軽減が可能である場合には当該措置を、分割等が不可能である場合には必要に応じて通行の中止を命ずる。
  3. 許可の取り消し・告発
    人の死亡、重症に関わる交通事故もしくは、道路の損壊に係る重大な交通事故を発生させたとき。道路管理者が付した条件、命令に違反して特殊車両を通行させたとき
  4. 即時告発
    重量が基準の2倍以上となる悪質な事業者に対しては、違反事実をもって警察に告発を行います。「基準の2倍以上」とは次の通りです。
  • 車両重量が「一般的制限値×2」以上の車両
  • 特殊車両通行許可証・回答書を受けた車両は「一般的制限値×2+(許可・回答の総重量-一般的制限値)」以上の車両
特車違反時の行政指導の流れ

違反の種類

  • 無許可通行
    許可なしーそもそも許可を取得していない/許可期限切れ/更新忘れ/車番変更による無許可
    車両諸元違反ー有効な許可証を持っているが、許可が与えられている車両諸元(幅、高さ、長さ、総重量など)を超過している場合
    通行経路違反ー有効な許可証を持っているが、許可経路以外の経路を運行していた場合。 他の経路で許可を取得していても取り締まりが行われた経路で許可を取得していなければ無許可として扱われます。
  • 許可証不携行
    有効な許可を取得しているが、車内に携行しておらず取り締まり時に掲示できなかった場合の違反 有効な許可証を携行し、なおかつ提示するまでは運転手の義務です。
    取り締まり時に提示できなければ不携行と同じ扱いになってしまいます。
    許可証を書面で携行する場合にはしっかりと管理、整理しておきましょう。 2019年4月からタブレット(8インチ以上推奨)でも許可証の携行が可能となりました。 書面で管理することは煩雑なので、タブレットを用いた許可証提示の準備をすることも考慮しましょう。
  • 通行条件違反
    道路管理者が必要な条件を付して許可を出す場合が多くあります。例えば誘導車の配置義務や夜間通行などです。 これらの条件に違反する運行は認められていないため、無許可と同じ扱いになります。
  • 措置命令違反
    違反が発覚した場合に措置命令を発出されます。例えば、積み荷の軽減措置命令です。 許可限度内の総重量に収まるようにその場で積み荷の軽減措置を求められます。 具体的には、運送事業者からトレーラ、クレーンを派遣してもらい、その場で、他のトレーラに積み荷を移動させます。 このような軽減措置に従わない場合には、措置命令違反に該当します。
違反の種類

違反の罰則(道路法第103条)

100万円以下罰金

  • 一般制限値違反・無許可
  • 許可証不携帯

6か月以下の懲役または30万円以下の罰金

  • 橋梁等の制限違反
  • 措置命令違反
違反事由罰則
一般的制限値違反・無許可100万円以下の罰金
許可証不携帯・回答書不携帯
措置命令違反6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金
法人両罰法人の従業員等が、法人の業務に関して上記の違反行為をしたときは法人に対しても罰金

NEXCOによる取り締まり

取り締まりは、許可権限のある国土交通省だけでなく高速道路管理のNEXCOでも行っています。
運送事業者は、数社の事業者で構成される組合に加入しており、その組合ではETCコーポレートカードが貸与されています。

このETCコーポレートカードには『大口・多頻度割引制度』があります。これは一般自動車より高額な大型車通行料金を多頻度にわたって利用する運送事業者には、高速道路利用料が大きく割引される制度です。

その恩恵は、月に数百万単位のところや大手では年間億単位にのぼります。

高速道路上で特殊車両通行許可違反が発覚し、累積点数が増加すると大口・多頻度割引制度の割引停止、利用停止などの措置があります。 ETCコーポレートカードを発行するためには多額の保証金が必要です。1社で多額の保証金を準備するのは負担が大きいので、組合を設立し保証金を積むことでコーポレートカードを取得します。この組合では1社でも多くの違反を犯せば、組合員全員に不利益が生じるのです。

まとめ|特殊車両ルールを守る重要性

特殊車両のルールは、道路の安全とインフラの長寿命化を目的としています。

  • 特殊車両は道路や橋に大きな影響を与える
  • 通行許可を取得することで、事故や道路の損傷を防ぐ
  • ルールを守らないと、罰則や営業停止処分を受ける可能性がある

適切な手続きを行い、安全でスムーズな運行を心がけましょう。

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