MENU

産業廃棄物収集運搬

公開日:2025/06/02 更新日:2025/06/03
産業廃棄物収集運搬業

産業廃棄物収集運搬業は、日本の産業活動と環境保全を支える重要なインフラです。しかし、参入には許可取得や法令遵守など多くのハードルがあり、特にこれから事業を始める方には難しく感じられるでしょう。

本記事では、「これから産業廃棄物収集運搬業を始めたい方」から、「すでに事業を展開している方」まで役立つ情報を網羅的に解説します。許可申請の要件、具体的手順、必要な車両・設備の条件、日々の業務管理のポイントなど、実務に直結する内容を専門家の視点からわかりやすくまとめました。制度の全体像と実務のポイントをしっかり押さえて、安定的かつ適法な事業運営を目指しましょう。

産業廃棄物収集運搬業、プロに任せてスピード解決!まずは無料相談から

あわせて読みたい
行政書士による産業廃棄物収集運搬業 産廃業者様の手続きを効率化 産業廃棄物収集運搬業許可の申請代行 \ 1分で申込完了 / 無料相談する 産業廃棄物の許可申請で こんなお悩みありませんか? 許可申請の ...

1. 産業廃棄物収集運搬業の概要と重要性

産業廃棄物を運ぶとはどういうことか

産業廃棄物を運ぶという行為は、廃棄物業界では「収集・運搬」と呼び、それぞれ「収集」と「運搬」に分けることができます。
具体的には、「収集」とは、複数の事業所の集積場所から産業廃棄物を回収し、運搬車両や別の保管場所へ移動することです。また、「運搬」とは、収集した産業廃棄物を積替え保管施設、中間処理施設、最終処分施設まで移動させることをいいます。
これら一連の「収集・運搬」は廃棄物処理法において、収集運搬基準が定められており、その基準を収集運搬業者に遵守させることにより、適正な事業活動を維持しています。

収集運搬業の役割と社会的責任

物流は動脈産業と、廃棄物処理は静脈産業と言われることがあります。人間の体と同じで、産業活動を通して排出された廃棄物は自然になくなるわけではなく、処理施設へ収集・運搬されることによって、処理されていきます。私たちが日ごろからそれらの事業活動を意識することは少ないですが、日本の産業活動を支える縁の下の力持ちとしての重要な役割を担っていると言えます。

収集運搬業の社会的な役割は大きく以下の3つに分けられます。

  1. 環境保全への貢献:産業廃棄物の不適切な処理は、土壌汚染や水質汚濁、大気汚染など環境問題の原因となります。収集運搬業者は廃棄物を適切に収集・運搬することで、環境汚染を防ぎ、自然環境を保全する最前線に立っています。
  2. 循環型社会形成への寄与:単なる廃棄物の運搬だけでなく、資源循環の中継点としての役割も担っています。分別収集や積替え保管などの作業を通じて、リサイクル可能な資源の有効活用を促進しています。
  3. コンプライアンスの徹底:不法投棄や不適正処理を防止し、廃棄物処理法をはじめとする関連法規を遵守することで、社会の信頼を維持する責任があります。

令和4年度の産業廃棄物の発生量は年間3億7,400万トンと非常に膨大であり、その適正処理は日本の産業と環境を守るために不可欠です。収集運搬業者は、この膨大な廃棄物を適正に移動させる重要な役割を担い、持続可能な社会の構築に貢献しています。

環境省:産業廃棄物の排出状況(令和4年度時点)より抜粋

産業廃棄物排出量

2. 許可制度の必要性と法的根拠

産業廃棄物収集運搬業の許可制度

産業廃棄物収集運搬業を営むためには、原則として都道府県知事の許可が必要です。この許可制度は廃棄物の処理及び清掃に関する法律(以下、「廃棄物処理法」)に基づいており、不適正処理を防止し、生活環境の保全及び公衆衛生の向上図ることをを目的としています。

(目的) 第一条 この法律は、廃棄物の排出を抑制し、及び廃棄物の適正な分別、保管、収集、運搬、再生、処分等の処理をし、並びに生活環境を清潔にすることにより、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とする。

産業廃棄物の収集運搬業を事業として行うことを許可制としている法的根拠は、廃棄物処理法第14条第1項に規定されています。

(産業廃棄物処理業) 第十四条 産業廃棄物(省略)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(省略)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。

産業廃棄物収集運搬業の許可は、以下のような重要な特徴があります。

  1. 都道府県ごとの許可取得 他の許認可と大きな違いとして挙げられるのは、産業廃棄物を収集する場所、運搬し終える場所(運び入れる処分場)が所在する都道府県の許可をそれぞれ取得する必要があることです。 例えば、広島県内の解体工事現場で排出された木くずを収集し、兵庫県にある木くずの中間処理場へ運搬する場合、広島県と兵庫県2つの都道府県の許可を取らなければなりません。ちなみに、広島県から兵庫県に移動する際、岡山県を通過しますが、通過するだけの岡山県の許可は取る必要はありません。
  2. 許可がなければ事業を行うことができない 産業廃棄物収集運搬業を事業として行おうとする場合、必ず許可が必要です。このことは当たり前に思われるかもしれませんが、例えば建設業許可の場合、請負金額500万円以上の建設工事を受注する場合に許可の取得が必要となっており、500万円以下の建設工事であれば許可の取得は基本的には不要です。一方で、産業廃棄物収集運搬業を事業として行う場合、極端な話、1円の運搬量でも許可がなければ違法となってしまいます。
  3. 収集運搬する廃棄物の種類を決める 産業廃棄物収集運搬業の許可証には取り扱う産業廃棄物の種類が記載されています。つまり、産業廃棄物収集運搬業の許可を取得したら20種類すべての産業廃棄物を収集運搬できるわけではなく、許可申請時に申請書に記載した種類を産業廃棄物について収集運搬する許可が得られるということです。

許可制度は単なる行政手続きではなく、産業廃棄物の適正処理を担保するための重要な制度です。許可を取得することにより、法令に基づいた適正な事業運営が求められると同時に、排出事業者からの信頼を得るための基盤ともなります。

無許可営業のリスクと罰則

産業廃棄物収集運搬業を無許可で営むことは、廃棄物処理法違反となり、厳しい罰則の対象となります。

第二十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。 一 第七条第一項若しくは第六項、第十四条第一項若しくは第六項又は第十四条の四第一項若しくは第六項の規定に違反して、一般廃棄物又は産業廃棄物の収集若しくは運搬又は処分を業として行つた者

  1. 刑事罰:無許可で産業廃棄物収集運搬業を営んだ場合、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、またはその両方が科される可能性があります(法人の場合は3億円以下の罰金)。
  2. 行政処分:無許可営業が発覚した場合、営業停止処分や施設の使用停止命令などの厳しい行政処分を受けることがあります。
  3. 社会的信用の喪失:違法行為が発覚した場合、企業名が公表され、社会的信用を大きく損なうことになります。これにより、取引先からの信頼を失い、事業継続が困難になる可能性があります。
  4. 欠格要件への該当:無許可営業で有罪判決を受けた場合、その後5年間は許可申請ができなくなります。また、法人の役員等が有罪判決を受けた場合も、その法人は許可を受けられなくなります。

無許可営業による罰則はその無許可営業を行った事業者自身に対するペナルティですが、適切な知識や設備がないまま産業廃棄物を取り扱うことで、環境汚染事故を引き起こす可能性もあります。そうした場合、原状回復費用や損害賠償など、莫大な経済的負担が生じる恐れがあります。

このように、無許可営業は短期的な利益を得るためにリスクを冒す行為であり、長期的な事業継続の観点からも絶対に避けるべき行為です。
産業廃棄物収集運搬業を始める際は、必ず正規の許可を取得してから事業を開始することを肝に銘じましょう。

産業廃棄物の許可制度

3. 許可取得の要件と申請手続き

必要な講習と事業者の要件

産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するためには、人的要件、施設・設備要件、経理的基礎など、複数の要件を満たす必要があります。
中でも特徴的なのは、個人事業主または法人の役員等が「講習会」の受講が求められている点です。

講習の受講要件

産業廃棄物収集運搬業の許可を申請するためには、日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)が実施する「産業廃棄物又は特別管理産業廃棄物処理業の許可申請に関する講習会」の受講が義務付けられています。この講習を修了した「修了証」が申請時に添付書類として必要です。

講習の概要

  • 主催:公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センター(JWセンター)
  • 受講対象者:法人の場合は代表者または役員、個人の場合は本人または業務を実質的に行う者
  • 講習内容:廃棄物処理法の仕組み、処理業者の責務、マニフェスト制度など

講習の受講方法は基本的にはオンラインで講義を視聴し、最後の修了試験のみ現地会場で受験するという流れです(2日間の対面講義もあります)。

▼講習の詳細はこちらの記事へ▼

あわせて読みたい
【産業廃棄物処理業 講習会】許可申請の際に「大変!!忘れていたっ!!」とならないために 産業廃棄物収集運搬業や処分業の新規・更新の許可申請においては、役員等が「講習会」を受講し、修了証を取得する必要があります。  いざ許可の申請をしようとした際、...

事業者としての要件

講習受講以外には以下の要件を満たす必要があります。

  1. 施設・設備要件
    • 産業廃棄物の種類に応じた適切な運搬車両や容器を有していること
    • 積替え保管を行う場合は、基準に適合した施設を有していること
  2. 経理的基礎
    • 事業を的確かつ継続して行うに足りる経理的基礎を有すること
    • 目安として、直近年度の自己資本比率10%以上や直近3年間で債務超過がないなどを求められます。ただし、これらは収支の改善計画書を提出するなどにより、許可要件を満たす対応を取っている都道府県が多いです。
  3. 人的要件
    • 産業廃棄物の収集運搬を的確に行うに足りる知識や技能を有すること(講習会受講によりクリアできます)
    • 欠格要件に該当しないこと(下記参照)
      欠格要件の具体的な内容は、廃棄物処理法第7条第5項第4号及び第14条第5項第2号に規定されています。 文章から具体的にどういった場合が該当するのかを判断するのは難しいため、不安な方は行政書士など許可手続きの専門家に相談してみることをお勧めします。

廃棄物処理法第7条第5項第4号

心身の故障によりその業務を適切に行うことができない者として環境省令で定めるもの
破産手続の開始の決定を受けて復権を得ない者
禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
この法律、浄化槽法その他生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの(注1)若しくはこれらの法令に基づく処分若しくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反し、又は刑法第204条、第206条、第208条、第208条の2、第222条若しくは第247条の罪若しくは暴力行為等処罰ニ関スル法律の罪を犯し、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者
第7条の4第1項若しくは第2項若しくは第14条の3の2第1項若しくは第2項又は浄化槽法第41条第2項の規定により許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者(当該許可を取り消された者が法人である場合においては、当該取消しの処分に係る行政手続法第15条の規定による通知があった日前60日以内に当該法人の役員であった者で当該取消しの日から5年を経過しないものを含む。)
第7条の4若しくは第14条の3の2又は浄化槽法第41条第2項の規定による許可の取消しの処分に係る政手続法第15条の規定による通知があった日から当該処分をする日又は処分をしないことを決定する日までの間に次条第3項の規定による一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法第38条第5号に該当する旨の同条の規定による届出をした者で、当該届出の日から5年を経過しないもの
ヘに規定する期間内に次条第3項の規定による一般廃棄物若しくは産業廃棄物の収集若しくは運搬若しくは処分の事業のいずれかの事業の全部の廃止の届出又は浄化槽法第38条第5号に該当する旨の同条の規定による届出があった場合において、ヘの通知の日前60日以内に当該届出に係る法人の役員若しくは政令で定める使用人(注2)であった者又は当該届出に係る個人の政令で定める使用人であった者で、当該届出の日から5年を経過しないもの
その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイからチまでのいずれかに該当するもの
法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイからチまでのいずれかに該当する者のあるもの
個人で政令で定める使用人のうちにイからチまでのいずれかに該当する者のあるもの

廃棄物処理法第14条第5項第2号

(第7条第5項第4号イからチまでのいずれかに該当する者)
暴力団による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下この号において「暴力団員等」という。)
営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイ又はロのいずれかに該当するもの
法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
個人で政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
暴力団員等がその事業活動を支配する者
(第7条第5項第4号イからチまでのいずれかに該当する者)
暴力団による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員(以下この号において「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下この号において「暴力団員等」という。)
営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者でその法定代理人がイ又はロのいずれかに該当するもの
法人でその役員又は政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
個人で政令で定める使用人のうちにイ又はロのいずれかに該当する者のあるもの
暴力団員等がその事業活動を支配する者

注1)生活環境の保全を目的とする法令で政令で定めるもの
大気汚染防止法、騒音規制法(昭和43年法律第98号)、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)、水質汚濁防止法(昭和45年法律第138号)、悪臭防止法(昭和46年法律第91号)、振動規制法(昭和51年法律第64号)、特定有害廃棄物等の輸出入等の規制に関する法律(平成4年法律第108号)、ダイオキシン類対策特別措置法、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法

注2)政令で定める使用人
(1) 本店又は支店(商人以外の者にあっては、主たる事務所又は従たる事務所)の代表者
(2) 継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、廃棄物の収集若しくは運搬又は処分若しくは再生の業に係る契約を締結する権限を有する者を置くものの代表者

許可取得の要件チェックリスト

書類一覧と申請書の作成手順

許可要件が確認できたら実際の申請書類を揃えていきましょう。
産業廃棄物収集運搬業の許可申請には、多数の書類の準備と正確な記載が必要です。以下に申請書類の一覧と作成手順を示します。(※許可を取得する都道府県によって用意する書類が微妙に異なりますので、詳しくは各都道府県の許可に関するWEBサイトをご確認ください)

申請書類一覧

基本書類

  • 許可申請書(第1号様式)
  • 事業計画の概要を記載した書類
    (※取り扱う産業廃棄物の種類、予定運搬先、収集運搬基準をどのように満たすかを記載する重要な書類!)
  • 事業の開始に要する資金の総額及びその資金の調達方法を記載した書類
  • 申請者が法人である場合には、直前3年の各事業年度における貸借対照表、損益計算書、法人税の納付すべき額及び納付済額を証する書類
    (具体的には直前3年分の決算書、法人税の納税証明書のことです)
  • 申請者が個人である場合には、資産に関する調書、直前3年の所得税の納付すべき額及び納付済額を証する書類
  • 本店所在地、駐車場等の周辺地図、見取図

欠格要件に関する書類

  • 誓約書 (欠格要件に該当しない旨)
  • 住民票の写し (法人の場合は役員全員分)
  • 身分証明書 (運転免許証などのいわゆる”身分証明書”ではなく、市役所で取得する「身分証明書」である点に注意!)
  • 登記されていないことの証明書 (各地方法務局の本局で取得しなければなりません)

施設・設備に関する書類

  • 運搬車両等の所有を証する書類 (車検証の写し等)
  • 運搬車両等の写真
  • 積替え保管施設の所有権または使用権を証する書類 (積替え保管を行う場合)
  • 積替え保管施設の位置、構造等を示す図面 (積替え保管を行う場合)

その他の書類

  • 講習修了証の写し
  • 定款または寄付行為の写し (法人の場合)
  • 法人登記事項証明書 (法人の場合)
  • 土地登記事項証明書 (本店所在地)

申請書の作成手順

1.事前準備

  • 許可を受ける自治体のホームページなどで最新の様式を入手する
  • 必要に応じて自治体の窓口に事前相談を行うとスムーズ

産業廃棄物の許可は各都道府県によって取り扱いが異なります。新鮮前に必ず各都道府県のホームページをご確認ください。 特に、申請方法(郵送、持参、予約制等)や申請手数料の支払方法はよくご確認されることをお勧めします。

2.申請書類の作成
大きくは、許可申請書(第一面~第三面)、事業計画(第一面~第十面)の書類を作成します。 特に、住所、本籍地、氏名などは添付する住民票、登記事項証明書と一致していることが求められます。

  • 許可申請書 
    法人情報、役員、株主の情報、取り扱う産業廃棄物の種類、運搬施設など基本的な情報を記載します。
  • 事業計画 
    事業の概要、収集運搬の方法、取り扱う廃棄物の種類、予定数量などを明記
    収集運搬基準、環境保全対策についても記載します
  • 運搬施設 
    車両写真車検証、記録事項
  • その他、公的書類などを揃えます

3.書類の整理と提出

  • すべての書類が揃っているかを確認
    (各都道府県のホームページに申請書類一覧・チェックリストを用意してくれていることが多いのでご活用ください)
  • 正本と副本(コピー)を用意する(自治体によって部数が異なる)
  • 本店所在地を管轄する申請窓口へ提出
産業廃棄物収集運搬許可申請の流れ

申請書類の作成は複雑で時間がかかるため、余裕をもってスケジュールを立てることが大切です。また、行政書士など専門家のサポートを受けることも一つの選択肢です。特に初めて申請する場合や、複数の自治体で許可を取得する場合は、専門家に相談することでスムーズに進めることができます。

申請書類を作成していく中で、事業を行うために必要な項目や許可要件を確認していくことができます。
許可取得後の適正な事業を行うために必要な項目をチェックしながら作成していくと良いでしょう。

4. 使用する車両に課せられる基準と表示義務

収集運搬基準

産業廃棄物の収集運搬する場合、廃棄物処理法施行令第6条第1項第1号に規定されている収集運搬基準を満たす必要があります。主な基準は下記の内容です(他にも基準がありますので詳しくは法令をご確認ください)

  1. 産業廃棄物が飛散、流出しないようにすること。
  2. 悪臭、騒音又は振動による生活環境の保全上支障が生じないように必要な措置を講ずること。
  3. 収集又は運搬のための施設には、生活環境の保全上支障を生ずるおそれのないように必要な措置を講ずること。
  4. 運搬車、運搬容器及び運搬用パイプラインは、飛散、流出、悪臭の漏れがないものであること。
  5. 運搬車両(運搬船)を用いる場合には、「産業廃棄物の収集又は運搬の用に供する運搬車(船舶)」である旨その他の事項を見やすいように表示し、かつ、必要な書面を備え付けておくこと。

産業廃棄物収集運搬業を行う場合に使用する車両はこれら収集運搬基準を満たした構造、設備であることが求められます。

車両構造の要件と表示義務

先ほど記載した収集運搬基準の5つ目に既定されている「「産業廃棄物の収集又は運搬の用に供する運搬車(船舶)」である旨を収集運搬に使用する車両に表示させる義務が課せられています。

  • 車両の両側面に表示すること
  • 鮮明で見やすい表示であること
  • 表示サイズ:産業廃棄物収集運搬車である旨は140ポイント以上(約5センチ)       
    会社名、許可番号は90ポイント以上(約3センチ)

環境省「産業廃棄物収集運搬車への表示・書面備え付け義務」パンフレットより引用

産廃収集運搬車の表示

これらの表示は、ステッカーやマグネットシート、ペイントなどの方法で行います。

複数の自治体で許可を取得している場合は、許可番号が異なっておりますが、許可番号下6桁は事業者固有番号でどの都道府県の許可でも同じになるため、下6桁の番号を記載すれば問題ありません。

表示義務を怠ると、行政指導や改善命令の対象となり、悪質な場合は罰則の対象となることもあります。また、排出事業者が委託先の適正性を確認する際にも、これらの表示が適切になされているかがチェックポイントとなります。

5. 積替え保管

積替え保管とは、収集した産業廃棄物を処理施設に直接運搬せず、いったん別の場所に降ろして保管し、効率的な運搬のために積み替える行為のことです。この積替え保管は、産業廃棄物収集運搬業において重要な役割を果たしますが、特別な許可と基準を満たした施設が必要となります。

積替え保管のメリット

積替え保管を行うことにより収集運搬業者は様々なメリットを得られます。

  • 運搬効率の向上
    通常、産業廃棄物を収集した車両は例え少量であっても直接処理施設に運搬しなければなりません。排出事業者から処理施設が遠い場合、収集運搬の効率が悪くなってしまいます。そのため、小量の廃棄物を積替え保管場所にまとめ、一定量まとまったら処理施設へ運搬を行うことで、運搬効率を向上させることができます。
  • コストの削減
    排出事業場から処理施設への運搬回数を減らすことで運搬距離が短縮でき、燃料費や運転手の人件費を削減することができます。
  • 環境への配慮
    運搬距離を短縮することは運搬車両から排出されるCO2を削減することにつながります。
産廃の積替え保管

このように積替え保管を行うことで様々なメリットがありますが、積替え保管を行う場合には保管施設の基準を満たした施設を用意し、追加の許可取得が必要となります。

積替え保管の許可

勘違いされやすい点ですが、積替え保管の許可は単独の許可ではなく、産業廃棄物収集運搬業に紐づく許可です。そのため、収集運搬業許可は、「積替え保管あり」「積替え保管なし」と表現されることがあります。

積替え保管を行うには、「積替え保管を含む産業廃棄物収集運搬業許可」を取得する必要があるということです。

産業廃棄物の積替え保管基準

積替え保管施設の設置基準

積替え保管施設が守るべき保管基準は、廃棄物処理法施行規則第8条に規定されています。

  1. 保管場所の周囲に囲いが設けられていること
  2. 生活環境保全上の措置
  3. 保管上限
  4. 積み上げ高さの制限
  5. 保管場所の表示

収集運搬(積替え保管)の基準要件

  1. あらかじめ、積替えを行った後の運搬先が定められていること。
  2. 搬入された産業廃棄物の量が、積替え場所において適切に保管できる量を超えないこと。
  3. 搬入された産業廃棄物の性状に変化が生じないうちに搬出すること。

6. 許可取得後に必要な対応

許可更新、変更届、事業範囲変更許可

産業廃棄物収集運搬業の許可を取得した後も、継続的な事業運営のためには様々な行政手続きが必要です。主な管理業務として、許可の更新、各種変更届の提出、定期報告書の作成・提出などがあります。これらを適切に管理することで安定した事業継続が実現できます。

許可更新の手続き

産業廃棄物収集運搬業の許可は5年間の有効期限があり、継続して事業を行うためには許可の更新が必要です。

▽詳しくはこちらの記事もあわせてご覧ください▽

あわせて読みたい
産業廃棄物収集運搬業許可の更新ガイド|行政書士がポイントを解説! 産業廃棄物収集運搬業の更新手続きは、講習の受講や書類の準備など、意外と手間と注意点が多いものです。本記事では、行政書士が実務の視点から、必要書類の取得方法、...

更新申請のタイミング

  • 有効期限の2〜3か月前から申請可能(自治体により異なる)
  • 許可期限日の前日までに更新許可申請を行う

更新申請に必要な書類
基本的には新規許可申請の書類と同様ですが、変更箇所がない場合に省略できる書類があります。
詳細は各都道府県のホームページをご確認ください。

  • 更新許可申請書
  • 有効期限内の講習会修了証の写し(忘れやすいので要注意!)
  • 欠格要件に該当しないことを証明する書類(住民票、登記されていないことの証明書など)
  • 使用車両一覧、車検証の写し
  • 財務諸表(直近3年分)、納税証明書
  • その他公的書類など

更新申請の手順

  • 必要書類の収集と作成
  • 講習の受講予約(予約が必要な都道府県もありますのでお早めに)
  • 許可更新申請書類の提出
  • 許可手数料の納付
  • 審査期間を経て新たな許可証が発行される

更新忘れ防止策

  • 許可証の有効期限を社内カレンダーに登録
  • 更新手続きの担当者を明確に決めておく
  • 半年前から準備を開始するルールを設ける
  • 行政書士など専門家へ事前に依頼しておく
産廃の更新手続きに

変更届の管理

事業内容や会社情報に変更があった場合は、変更届を提出する必要があります。
注意が必要なのは産業廃棄物収集運搬業許可の場合、各都道府県で許可を取得していますので変更届も各都道府県に提出する必要がある点です。
極端な話、47都道府県全ての許可を持っている事業者が運搬車両1台を増車する場合、47都道府県全てに変更届を提出しなければなりません。

届出が必要な主な変更事項(廃棄物処理法施行規則第10条の10)

  • 商号・名称
  • 役員、株主等の変更
  • 事業所及び事業所の所在地
  • 使用車両の変更(増車・減車)
  • 積替え保管を行う場所や保管上限の変更

変更届の作成と提出

  • 変更届出書(自治体指定の様式)
  • 変更内容を証明する書類(登記事項証明書、車検証など)
  • 許可証の書換えが必要な場合は許可証の原本も提出

変更届の管理ポイント

  • 変更事項の社内把握体制の構築
  • 変更があった場合の変更届の提出期限は原則10日以内 (法人の登記事項証明書の添付が必要な場合は30日以内)
  • 複数自治体から許可を受けている場合は、すべての自治体への届出が必要

事業範囲変更許可

変更の内容によっては、変更の届出ではなく、事業範囲変更許可申請が必要なケースがあります。代表的なものは、取り扱う産業廃棄物の種類を追加する場合、新たに積替え保管を行う場合です。これらが必要になった際には変更届ではなく事業範囲変更許可申請を行います。

該当するケース

  • 取り扱う産業廃棄物の種類を追加
  • 新たに積替え保管を行う

申請手続き
基本的には新規許可・更新許可と同様の書類を揃える必要があります。

事業範囲変更の場合、行政に支払う申請手数料が71,000円(収集運搬業の場合)が必要になります。そのため、新規許可申請時には取り扱う産業廃棄物の種類をしっかり確認し、申請時には取り扱いがない場合でも今後取り扱う可能性がある種類は記載しておくことをお勧めします。


以上、廃棄物処理の重要な工程である「産業廃棄物収集運搬業」全般について解説しました。
これから許可を取得し、事業を始める方、すでに事業を始めており改めて法制度について確認したい方にとってお役に立てる内容であれば幸いです。

不明点や不安に思うところがございましたら、ぜひ許可手続きの専門家である行政書士にご相談ください。